【コラム】BY(酒造年度)のお話
あけましておめでとうございます!
このコラムを投稿している7月1日は、日本酒造りにおける年明けの日です。
日本酒造りでは、7月1日から翌年の6月30日までを1つの単位として「酒造年度」と呼んでいます。
つまり、今日が平成27酒造年度の始まりの日に当たり、これから造られるお酒は「27BY」の日本酒ということになります。
BY(酒造年度)とは
上に「27BY」と書きましたが、日本酒のラベルに「○○BY」と書かれているのを目にすることも多いのではないでしょうか。
この「BY」とは「Brewery Year」つまり、酒造年度(醸造年度)のことで、
その日本酒の出来た年を表す言葉、ワインで言うvintage(ビンテージ)に当たります。
例えば、26BY = 2014年(平成26)7月1日 ~ 2015年(平成27)6月30日 の期間に造られた日本酒
19BY = 2007年(平成19)7月1日 ~ 2008年(平成20)6月30日 の期間に造られた日本酒 というようになります。
酒造年度の歴史
「酒造年度」の始まりは、明治29(1896)年に定められた「酒造税法(現在の酒税法)」により、
酒税収入の基本となる酒類の製造量を把握することを目的として作られたことにあります。
秋に収穫したお米を使い、10月頃から始まり春先にかけて出来上がる日本酒造りにおいて、
暦年(1月~12月)や会計年度(4月~翌3月)を基準にすると、製造期間の途中で年度が変わることになり税務検査上で大変不便だったのです。
初期の酒造税法では、10月から翌年9月が酒造年度とされ、10月1日が新しい酒造年度の始まりの日でしたが、
昭和40酒造年度の国税庁の通達により、現在の「7月1日 ~ 翌年6月30日」へと変更になりました。
7月からに改められた現在でも、この10月1日は「日本酒の日」として各地でイベントなどが催され親しまれています。
大阪では、昨年復活し30を超える酒蔵と飲食店の参加した「日本酒ゴーアラウンド」が有名でしょうか。
今年は大阪以外の年でも同時開催されるそうで、今から待ち遠しいですね。
BY≠Vintage
かつて日本酒は、秋に収穫されたお米を使い、気温が低く衛生管理のしやすい冬に酒を醸造する「寒造り」が主でしたが、
冷蔵設備の進歩した現在においては、温度・衛生管理された環境で年間を通して日本酒を造る「四季醸造」をする蔵元も増えてきています。
一般的には「上槽(もろみを搾る工程)」した日を基準にBY(酒造年度)が決まります。
そのため、前年度に収穫されたお米や古米を使い、新しいBYの日本酒を発売することも可能となっています。
一方、ワインにおけるVintage(ビンテージ)はブドウの収穫年を表します。
最近ではそれに習い、上槽日を基準とするBY(酒造年度)表記だけはなく、使用しているお米の収穫年を表示する蔵元も増えてきています。
当店で取り扱っているくらもとでは、貴、伯楽星などがこれに当たります。
BYのこれから
BY(酒造年度)のことを色々と説明してきましたが、実は近年まであまりラベルにBYは表記されてきませんでした。
まず、日本酒においては「しぼりたて」や「ひやおろし」が重宝され、出来上がってから1年以内に飲みきるのが一般的だったこと。
年間を通して流通する酒も、新酒と古酒をブレンドして品質・味わいを一定にして出荷していたものが多かったこと。
そして、「Vintage(ビンテージ)」や「熟成」の概念が乏しく、
酒造年度が前のお酒は古いお酒(≒価値の低いお酒)だと捉えられがちであったこと。などが、あげられると思います。
しかし、ワインやウイスキーなどの普及に伴い、日本酒市場においても「熟成」「Vintage(ビンテージ)」の価値が見直され始めています。
「古酒」をテーマにした飲食店の登場や、上記のVintage(ビンテージ)に対する蔵元の取り組み、
最近では「海中熟成酒プロジェクト」も注目を集めています。
「熟成」による変化は、味にコク・複雑さ・奥行きが増し、
チーズなど意外な食材との相性が良くなったりと、日本酒の裾野を広げてくれます。
もしかしたら、近いうちに日本酒の垂直試飲(異なる生産年度の同じワインを飲み比べるワイン用語)が楽しめる日が来るかもしれません。
27BYの日本酒が出来上がるのはまだまだ先の話ですが、今年はどんなお酒が出来上がるのか、今から楽しみですね!
長々と書いてしまいましたが、今日はおめでたい日本酒のお正月です。
今晩は、ぜひ日本酒で乾杯を。