
山中酒の店の卒業生で独立一号店。ご夫婦ともに山中で勤務経験あり。
取材はお二人の絶妙な掛け合いで話がふくらんでいく。
時に真面目に、時に面白く。時に論理的に、時に感覚的に。
お二人の色んな面が混ざりあった会話。
お店の営業もこんな感じかもしれません。

いのししの自家製納豆漬け

天然のすっぽんと虎杖の味山椒煮
山中酒の店在職中エピソード
Q. 山中酒の店を知ったのは?
大阪大学の大学院で研究をすることになって、大阪へ。
その頃にはすでに日本酒にはまってたので、自然と山中酒の店にお酒を買いに行ったのが山中酒の店との出会いですね。
Q. なぜ入社を決められましたか?
大阪大学の研究職をしていて、少し行き詰ったときにこのまま研究職を続けるか、当時アルバイトをしていた山中酒の店にいこうかと考えた上で、山中に決断しました。
Q. お料理(飲食店)を始めようと思われたのはいつからですか?
料理を料理人としてやりはじめたのは山中に入社した後。
そのときに料理をやっていた人がいなくなったからっていうのが理由です。
元々ホールでサービスをする事に興味があり、お酒のサービスに注力していた。
だから最初から料理をしよう!とか独立したい!とかは考えてなかったんですよ。
Q. 修行期間はどれくらい
約8年。大変だったけど、今振り返ると本当に好きにやらせてもらったな、という印象が 強いですね。
Q. 修行期間はどれくらい
約8年。大変だったけど、今振り返ると本当に好きにやらせてもらったな、という印象が 強いですね。
Q. 好きにやらせてもらったというのは、どのように?
当時創作料理っていうジャンルがまだ一般的じゃなくて、その中で基広さんを中心にさかふねは創作料理をやっていて、すごい盛り上がっていた。
そんな中、一から教えるみたいなことはあまり無くて、試行錯誤でした。
アルバイトさんでもキッチンで食材を回したり、造りも引いてたりしていました。
なによりイベントも経験が無い中いっぱいやりました。合コンから仮装パーティ、
果ては暗黒舞踏と日本酒の会なんかも。
全然人が集まらなくて困って(笑)
そんな風に良い意味でも悪い意味でも好きにやらせてもらいましたね。
Q. そんな修行時代の苦労したこと、良かったことは?
料理もサービスも経験が無かったのを独学でやったことですね。
さっき言った通り試行錯誤でのスタートでしたから最初に作った料理は酒蒸し”っぽい”ものでしたし、手作りのなれずしにすごいカラフルなカビが生えたりとか色んな失敗をしました。
でも料理もイベントもほんとに無茶なこともやったおかげで、この一線は超えたらいけないっていう感覚が身についた。
これは大きなことでした。
Q. そんな経験があったからまゆのあなの立ち上げを任されたんですか?
まゆのあなは元々僕達がやるはずじゃなかったんです。
だから外部からの意見としてけっこう無茶な提案もしたりしてたんですが・・・
突如僕達2人が任されることになって、いざやってみると時間が無いし、人もいないしで大変でした。
かむなびを設計していただいた建築士の小笠原さんもまだその時は大きな規模の居酒屋を本格的に設計するのも初めてでしたし、急ピッチで作ったのもあって、やってみると不備も多くて。
魚焼いたら煙まみれとかクーラー効かないとか。
でも「まゆのあな」は大箱だし、山中にとっても初めて酒屋の近く以外のアウェーでやるっていうのもあって、大きな一歩、変革だったと思うし、それに関われたのは良かったですね。
「味酒かむなび」について
Q. お店の名前の由来は?
「最初は発酵食品が好きで、「おくされや」にしようとしてたんですけどねぇ。
でも飲食店で「くされ」はダメだろうと。そのときに奥さんの知り合いの大学の先生から「味酒(うまざけ)」っていう枕詞が
あることを聞いたのがきっかけです。
その枕詞にかかることばに「かむなび」があって、意味は「神様が宿る森」。
他に使っている店も無かったし、良いなと思って。内装もそれをイメージしてるんです。
店に入って奥に行くほど高くなっているのは山の奥に入っていくイメージにしてます。壁や天井からの光の差し方も木漏れ日や木立ちを思わせた作りなんですよ。
Q. お店について教えてください。
カウンターしか無いから、お客様とはがっつり向き合う形になってます。
それは店内全部に声が届くようにしたいから、この造りにしました。
そしてお客様と対話するために来店が初めての方の団体でのご来店はお断りしてます。
団体だとお客様だけで盛り上がっちゃって伝えきれないことがあるので。
Q.お料理についてのこだわり。
お酒と一緒ですが、すでに世の中には沢山の素敵な生産者がいて、素敵な食材があふれています。
どうしたら、それらの存在をお客さんにある種の「リアリティ」さとともに伝えられるか?そのためには、見せかけの複雑さには逃げず極力シンプルに提供すること(例えば、一つのお皿にメインの食材は3種類以内に抑える、とか)が何より大事です。
その上で、せっかくお客さんは足を運んでお金を払ってお店に来てくださるわけですから、楽しい時間を過ごしてもらうというエンターテイメント、「非日常」的なものも欠かせません。
「シンプル」と「非日常」という一見相反するものから、どうしたら「ささやかな感動」というものを引き出せるか?
つたない経験・技術・思考を少しでも駆使して、毎日毎日、試行錯誤の日々です。
市場で悩み、仕込みで悩み、お客様の前で料理を作りながら悩み・・・ほんとお客さんが実験台です(笑)
ここ3年近く、料理はコースのみになっていますが、少し変わったスタイルにしています。
メニューが2段構えになっていて、上の段には食材がズラッと並んでいます。前半は上の段の食材をすべて使って6皿ほど料理をおまかせで提供します。
後半は、下の段がうちの定番の酒肴が15~20種類並んでいて、お客さんには3品選んでいただきます。
こちらはシンプルな冷奴や野菜のお浸しから納豆やなれずし、チーズを使った怪しいものまでバラエティたっぷり。
前半のおまかせは「和の味」の範囲内で抑えた料理ですが、後半はお客さんで好みで好き勝手に選んでいただきたいと。
もちろんダラダラ飲みたい方は酒肴を追加していただいてもかまいませんし、最終的にはそれぞれのお客さんがそれぞれに楽しく飲み食いしてもらえたら本望です。
とは言っても、その日その日で自分が出会った素敵な食材を食べてほしいという思いもあるので、その妥協点が今のうちのスタイルになっています。
Q.大切にしていることは何ですか?
結局ね、お客さんとコミュニケーションを取りたいんですよね。しかも「腑に落ちる」コミュニケーションを。
例えば、料理をすべておまかせにして、お酒もペアリングを考えて順序良く出して・・・それはお客さんにとっても(お店にとっても)楽ちんで美味しい時間を過ごせるかもしれない。
でも、そういう時でも、「あれっ?」って思うことってあるでしょ。
このお酒を合わせて、とお店の人は言っているけどさっきのお酒のほうが合ってたんじゃないかな?でも明らかに合っていなかったらヒトコト言いたくもなるけど、まあまあ合っている気もするからまあいっか、とか。
もう、なんかそういう些細な「腑に落ちない」状況がすごく引っかかるんですよね~。だから、なるべくお客さんが話しやすくなるような風通しのいい環境作りは常にこころがけています。
カウンターを一段高くして必ず我々がお客さんを見下ろすことのないようにしていること、お酒のメニューの1行コメントを突っ込みどころ満載にしていること、怪しいけど素敵なトイレの内装、などなどはすべてそのためです。
料理・お酒・器・お店の内装が全てバランスよく配置され、結果としてお客様にとって楽しくて意味のあるコミュニケーションができる場、それこそが「居酒屋」だと強く思うんです。
・・・とここまで書いてよくよく考えると、結局それが、山中の社長がずっとやってきたことなのかな、と。
言葉では一切聞いたことが無いけど、山中で教わったことのキモはそこにあるのかな、と今、気づきました(^^;
お店の基本情報
› 開店日 | 2008年1月29日 |
---|---|
› 営業時間 | 18:00~23:30(LO21:00) |
› 定休日 | 月曜日と月二回連休あり |
› 座席数 | カウンター13席 |
› 客単価 | 10,000円前後 |
› コース料金 | 6,000円(税別) コース料理のみ(酒肴の追加あり) |
› 一品 | 300円~ |
› 地酒 | 550円~(100ml) | 常時 50蔵 |
› その他 | 〇予約|要 〇駐車場|無 〇喫煙|不可 〇クレジットカード使用|可 |
› 住所 | 大阪市中央区内久宝寺町2-7-12 【googlemapはこちら】 |
› 最寄駅 | 大阪市営地下鉄「谷町6丁目」駅 6番出口 徒歩5分 大阪市営地下鉄「谷町4丁目」駅 7番出口 徒歩5分 |
› TEL | 06-6765-0930 |
› HP |
日本酒との出会いは?
父親が石川出身で、菊姫や天狗舞など地酒とは馴染みがあったので、日本酒に対してはすんなりと入っていけた。
大学生になってから、どんどんに日本酒にハマって。
当時流行っていたパソコン通信から日本酒の情報を得たり、大学の近所の地酒専門店に通って色々とかわいがってもらったりしていました。
最初に買ったのが『出羽桜 桜花 吟醸』だったとかも覚えてるなぁ。